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アーレントによる活動の三類型と三つの「孤」

            ―『全体主義の起源』再考

【メモ】

○『全体主義の起源』において対置されている3つの「弧」概念―loneliness/isolation/solitudeと、人間活動の三類型―labor/work/actionの対応関係についての論考。

→後者については『起源』と『条件』で仔細に述べられているため引用部には困らないが、前者が対置されて登場するのは『起源』のⅢ部4章とプロローグのみ。情報量が圧倒的に少ないのでちょい苦戦しそう。

○以下は以前制作した『起源』と『条件』の読解メモから引用。

・Loneliness……社会的な領域における孤立/人間的付き合いそのものからの離脱/全体主義を成立させる上で不可欠な態度/人間のもつ最も根本的で最も絶望的な経験の一つ。
・Isolation ……政治的な領域における孤立/政治的領域からの離脱/「制作(poiesis)」のためには不可欠な態度=制作物によって世界との接触は保たれてている。
・Solitude……孤独/私と私自身(me and myself)の対話が可能=一者のうちにある二者(two-in-one)/すべての思考において不可欠な態度/自分のなかの自己を打ち捨てることでlonelinessに転化することもある。

・「労働 labor とは、人間の肉体の生物学的過程に対応する活動力である。人間の肉体が自然に成長し、新陳代謝を行い、そして最後には朽ち果ててしまうこの過程は、労働によって生命過程の中で生み出され消費される生活の必要物に拘束されている。そこで、労働の人間的条件は生命それ自体である。」

・「仕事 work とは、人間の存在の非自然性に対応する活動力である。人間存在は、主の永遠に続く生命循環に盲目的に付き従うところにはないし、人間が死すべき存在だという事実は、種の生命循環が永遠だということによって慰められるものでもない。」

・「活動 action とは、物あるいは事柄の介入なしに直接人と人との間で行われる唯一の活動力であり、多数性という人間の条件、すなわち、地球上に生き世界に住むのが一人の人間 man ではなく、多数の人間 men であるという事実に対応している。」 (Arendt  1958→1973 HC p.19-20)

​○↑ざっと見ただけでも対応関係があるように思える。

○また森川輝一によれば『起源』は初版と2版以降で大幅に加筆修正がくわえられており、初版では全体主義における諸個人の状況がisolationとされていたのに対し、2版以降はlonelinessに変更されている(森川 2010)。そして、この変更は第Ⅲ部4章"Ideology and Terror"の追加によって反映されている(したがって3章には「全体主義下における諸個人はisolationの状況にある」といった記述が見られる)。

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