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Garfinkel,Harold 1968 「エスノメソドロジー命名の由来」

http://www.amazon.co.jp/エスノメソドロジー―社会学的思考の解体

 

 本論文(というか対談)は、エスノメソドロジーの創設者であるH,ガーフィンケルによる、EM的なパースペクティブを簡潔に紹介したものだ。分量としては非常に少ないのだが、内容は整理されており、EMの感覚を掴みたいのであれば一読しておく必要があるだろう。

 

 従来的な社会学においては、とある社会的な現象を「社会学者の立場から」考察してきた。しかし、ガーフィンケルはその基本的な社会学のスタンスに疑問を投げかける。彼は陪審員たちのやりとりを観察した際に、陪審員たちが自分たちのやり方で、自分たちの仕事を理解していたことに気づく。つまり陪審員たちのやりとりは彼ら独自のやり方で秩序だっていたということだ。従来の社会学ならば、その秩序を社会学のタームを用いて考察するだろう。しかし、そもそも現前のやりとりにおいて秩序が成り立っているのであれば、社会学者が外部からの眼差しによって考察するのではなく、むしろその日常的な実践をいかにして当人たちが営んでいるか、ということを観察すべきではないのか、というのがガーフィンケルの、そしてEMの根本的な発想である。

 

 その社会を運営する日常的な実践者たちにとって、その運営の方法は当人たちにとってまさに「当たり前」のことであり、「観察可能で、報告可能(observable-reportable)」な出来事のはずである。エスノメソドジストは、その「観察可能で、報告可能(observable-reportable)」な方法を、「説明可能な(accountable)」事実として再特定化していくのである。エスノメソドロジーとは、社会の「成員たち(=エスノ)」による日常的実践の「方法(=メソドロジー)」を突き止めていく、新たな社会学的思考のことなのだ。

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