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Sacks,Harvey 1979 「ホットロッダー―革命的カテゴリー」

http://www.amazon.co.jp/エスノメソドロジー―社会学的思考の解体

 

 本論文は代表的なエスノメソドロジストの1人であるH,サックスによる「ホットロッダー」たち(ホットロッドと呼ばれる車を乗り回す若者)の考察だ。サックスは会話分析を確立したことで有名だが、本論文は若者たちの会話から着想を得つつも、会話それ自体というよりは下位文化の中に見る「カテゴリー化」に焦点を当てた内容になっている。

 サックスが若者たちの会話に注目してみたところ、彼らは車の分類学(タイポロジー)の制作に精を出していたことがわかった。しかし、若者たちには現に「若者」という分類があるように、世間一般からすでに様々な分類学によってカテゴライズされているはずである。であるのならば、若者たちが自ら積極的に分類学を生み出していくのは何故なのだろうか。そこにサックスの関心があった。

 そこでサックスはまず、世間一般による「ティーンエイジャー」というカテゴリーと、若者たち自身による「ホットロッダー」というカテゴリーを対置させる。そして「ティーンエイジャー」というカテゴリーは当該集団以外が所有している点において、『創世記』14章に登場する「ヘブライ人」というカテゴリーと同質なものであるとサックスはいう。このような支配的なカテゴリーは基本的に人がどのように現実を理解しているかということを規定しており、そのことから「ティーンエイジャー」とは世間一般が所有する若者一般のプロトタイプであるということができるだろう。さらに、このカテゴリーに相対するカテゴリー、すなわち当該集団が所有するカテゴリーは「支配に対する」ことから「革命的なカテゴリー」であるとサックスは主張するのである。

 

 当該集団の所有するカテゴリー―「自己執行カテゴリー」は、カテゴリー化に必然的についてまわる問題を解決するのにも機能する。あるカテゴリーに所属する(させられる)人物が特異な逸脱をし、それがマスメディアなどによってセンセーショナルに取り上げられた際、おそらくそのカテゴリー全体に負のサンクションが下されることになるだろう。例えば、「ティーンエイジャー」の誰かが白人女性を強姦し、殺害したのであれば、「ティーンエイジャー」全体がバッシングに曝されるということである。しかし、この時、「自己執行カテゴリー」を用いることによって、世間の現実認識と自分たちの現実認識の間に大きく溝を作ることができるのである。「自己執行カテゴリー」が外部集団に浸透していくかということも、この場合課題となるだろう。

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